その翌日。
今日は、私が金ちゃんに呼ばれて、白石くんの所へ向かった。



「どうしたの?」

「あんなー、今日は白石が腹減ってんてー。そやから、またたこ焼き食べに行かへん?ワイ、今日はちゃんと財布持ってきたしー!」

「うん、いいよ。」

「ほな、またみんなにも声かけてくるな〜!」



そう言って、金ちゃんは駆けて行く。・・・・・・今日も元気そうだね、金ちゃん。
微笑ましく思いながら金ちゃんを見送っていた私とは対照的に、白石くんはどこか浮かない顔をしているように見える。



「・・・・・・白石くん?」

「ん、どないしたん?」



あれ?気のせいだったかな?
そう返事をした白石くんは、いつもと変わらない様子だった。



「ううん。たこ焼き、楽しみだね、って言おうと思っただけ。」

「そうやな。」

「それじゃ、また後で。」

「ああ、あとちょっと頑張ろな。」

「うん。」



・・・・・・って、私!!昨日と同じミス・・・・・・!また、すぐに話を終わらせちゃった・・・・・・。
大丈夫!昨日と同じで、この後も時間があるんだから!

そして、部活後、私たちを待っていたのは、またしても。



「すまん〜・・・・・・。今日も、みんな用があるみたいやー。」

「・・・・・・そっか。それじゃ、仕方ないね。今日も三人で行こう?」

「そやな!ほな、行くでー!」



昨日と同じように、金ちゃんはそれだけを言うと、走って行った。
・・・・・・こう言うのも、どうかと思うけど。少しラッキーかな。



「みんな、忙しいみたいだね。」

「え?・・・・・・ああ、うん。そうやな。」



あれ?白石くん、何だかまた表情が厳しいと言うか、何と言うか・・・・・・。



「白石く・・・・・・。」

「そやけど、その言い方やと、俺らが暇な人間、て言うてるみたいやで?」

「あっ!い、いや、そういう意味じゃなくて・・・・・・。」

「わかってるって。冗談や。」



そう言いながら、白石くんは笑っていた。・・・・・・う〜ん、やっぱり気のせい??
でも、いつまでも気にするより、今は楽しく喋っていた方がいいよね!
と思いながら、昨日と同じ道を歩いて行く。その先にいたのは、既にたこ焼きを買い終えていたらしい金ちゃんだった。



「――ほら、二人の分も買うといたでー。今日はワイの奢りや!」

「え?!金ちゃん、何言って・・・・・・。」

「だって、昨日は白石に買うてもうたやろー。そやから、今日はワイがお返しせな!」

「でも、私は・・・・・・。」

「ええやん、ええやん。ついでや。な、白石!」

「そうやな。そういう時はありがたく受け取っとき。」

「でも、後輩の金ちゃんに奢ってもらう、っていうのは、さすがに・・・・・・。」

「何や!年下でも、ワイは男やで!こういう時は、男が奢るって、昨日白石も言うとったやんか!」

「ん〜、そうだけど・・・・・・。」



でも、私からすれば、やっぱり先輩が奢るべきなんじゃないか、と思うんだけど・・・・・・。まあ、こうなったら、金ちゃんも折れないだろうしね。



「わかった。それじゃ、ありがとう。」

「熱いから、気ぃつけやー。・・・・・・そうや!ワイが冷ましたるな!」

「え・・・・・・?」



金ちゃんは一旦差し出しかけたパックを戻し、他の二つの上に重ねると、それを開けた。そして、そこから、楊枝の刺さったたこ焼きを取り、ふーふーと息を吹きかける。



「はい、あーん。」

「えぇっ?!」

「ほら、早よせな、楊枝から抜けて落ちてまうで!」

「あ、う、うん・・・・・・。」



食べ物を粗末にはできず、私は金ちゃんが差し出す楊枝から、たこ焼きをパクリと食べた。
・・・・・・いろんな意味で熱い。



「どや!美味いやろー?・・・・・・そろそろ、次いくか?」

「も、もういいよ、金ちゃん!ほら、金ちゃんだって、早く食べたいでしょ?それに、白石くんにも渡さないと!」



もう一つ同じように食べさせてくれようとした金ちゃんを、慌てて止める。・・・・・・慌てすぎて、かなり挙動不審になった気もするけど。この際、仕方ないじゃない!



「それもそうやな。ほな、これ渡すな。」

「うん、ありがとう。」

「んで、白石の分。」

「・・・・・・ああ、おおきに。」

「ほな、いただきまーす!!」



そして、金ちゃんは、あっという間に食べてしまった。・・・・・・ちゃんと噛まないと、危ないよ。



「――っはぁ、美味かった!ほな、また明日〜!」

「あ、うん。またね、金ちゃん。」



帰るのも、また早い。そんなことはないとは思うけど、こけたりしないか心配だ。だから、少し落ち着いて、と声をかけたいところだったけど、あまりの速さに、挨拶をするので精一杯だった。
・・・・・・仕方ない。また今度、注意しておこう。
さてと。



「私たちも、そろそろ食べ始めよっか?」

「・・・・・・。今日は、ちょっと移動してもええか?」

「ん?うん、いいよ。」



少し不思議に思いながら、白石くんについて行くと、近くの公園に着いた。
そっか。ここならベンチもあるし、今の時間帯なら遊んでる子供たちもほとんどいないし、ゆっくり食べられるもんね。



「・・・・・・ここでええか。」

「うん、そうだね。」



二人で腰かけ・・・・・・って、これ、よく考えれば、とても幸せな状況では?!も、もしかすると、周りからはデートだと思われなくもないんじゃ・・・・・・・!!
ああ、ダメだ!そんなこと考えてたら、また話せなくなるに決まってるっ!
別に普段だって、隣に座ることもあるんだから。うん、意識しない、意識しない。



「いただきまーす。」



そう言って、私は神経をたこ焼きに集中させた。



「・・・・・・。」

「!・・・・・・な、なに?」



だけど、それは白石くんによって遮られてしまった。



「金ちゃんのこと、どう思っとる?」

「・・・・・・へ?」



あまりに予想外の質問に、間抜けな声を出してしまう。そんな私の反応を見て、白石くんは自嘲したような笑みを浮かべた。
・・・・・・え、えっと。な、なんだろう。



「悪い。こんなことは、先に聞くことやないな。」

「?」



未だ白石くんの話についていけず、私は首を傾げるばかり。そんな私を見て、今度は白石くんが真剣な表情になった。



「突然のことで驚くかもしれへんけど・・・・・・。ちょっと、真面目な話、してもええか?」

「う、うん・・・・・・。」

「おーきに。」



そう言って微笑む白石くんはいつもと変わらないように見えた。でも、その後、ふーっと少し息を吐き出す音が聞こえた。
白石くん、何だか・・・・・・緊張してる?



「俺な、・・・・・・のこと、好きなんや。」

「・・・・・・!」

「そやから・・・・・・、さえ良ければ、付き合うてほしい。」



一瞬、白石くんの言葉の意味が理解できなくて、呆然とする。そして、意味がわかっても、信じられなくて呆然とする。
白石くんが、私のことを、好き・・・・・・?それで、付き合って、って・・・・・・。
え、えぇー?!!・・・・・・うう、驚きすぎて、声も出ないっ。
それに、何て返せばいいんだろう?なんか、上手く言った方がいいの?
そうやって、私が混乱している間、白石くんは返事を急かすわけでもなく、ただ待っていてくれた。そのおかげで、少しずつ落ち着いてくる。



「あ、あの・・・・・・。わ、私でよければ、喜んで。」

「!!・・・・・・ホ、ホンマか?!」

「えっ!う、うん・・・・・・。私も・・・・・・好き。」



私の答えを聞いた白石くんは、驚きながらもほっとしたように息をついた。
そんな反応を見て、私も少しほっとする。
きっと、お互い、緊張が多少は和らいだ、ってことなんだろうな。



「・・・・・・俺な、さっき、情けないけど、金ちゃんに嫉妬してしもたんや。」

「そ、そうだったの?」

「そやから、の口から、そないな返事が聞けて、ホンマ嬉しい。今日も、このままの関係でええんやろか、って悩んでたところやったしな。」

「あ、それ、私も。私も、今でも充分仲良くしてもらってるけど、このままじゃ・・・・・・って考えてて。そしたら、金ちゃんに声をかけられて、ついお腹が減った、なんて言って、昨日はたこ焼きを食べに行くことになったんだけどね。」

「そうやったんか。・・・・・・いや、実は俺も同じで、昨日と一緒にいられたことで、余計そういうことを考えるようになって。そしたら、金ちゃんに声かけられたから、ふとと同じように腹減った、って言うたら誤魔化せるかと思ったんやけど。も同じやったんか。」

「そうみたいだね。」



白石くんと同じようなことで悩み、そして、同じような展開になっていた。ただ、それだけで嬉しくて、自然と笑顔になる。



「もしかして、金ちゃん、わかってたんやろか・・・・・・?」

「それも、昨日、私も思ってた。でも、それはないと思うよ。」

「・・・・・・そやな。考えすぎやな。」



なんて楽しく会話をしながら、その後は、彼氏となった白石くんに家まで送ってもらった。

翌日。
部活中に、白石くんと相談をしていた。みんなに、私たちのことを報告するかどうか、という問題で。
この後、みんなに言おうか、とも思ったんだけど、何だか言い出しにくいと言うか。やっぱり気恥ずかしいと言うか。



「――か、隠したいわけじゃないんだけど。わざわざ報告しなくてもいいかなーって。」

「・・・・・・わかった。じゃあ、聞かれたら答える。けど、自分らからは言わん。それでええか?」

「うん、そうしよう。」



そう結論が出た瞬間。



「なあ、二人とも〜!何話しとるん〜?」

「き、金ちゃん?!ど、どうしたの?」

「んー?何か、二人がコソコソ話しとるから、何やろな〜っと思て。また腹減ったん?」

「え、あ、ううん。そうじゃないの。」

「今日は大丈夫やな、って話をしとったんや。」

「そうか!それは良かったな!」

「・・・・・・うん、そうだね!」

「ほな、部活最後まで頑張ろな〜!」



金ちゃんは突然現れ、そして早々と立ち去った。



「ふぅ〜・・・・・・。ビックリした。思わず、隠しちゃったけど・・・・・・。」

「まあ、今のは聞かれたわけやないから。」

「そ、そうだね。・・・・・・本当、金ちゃんってタイミングが良すぎる。もしかして、昨日白石くんが言ったように、わかっててやってるのかな〜?そんな風には見えないんだけど。」

「・・・・・・どっちにしろ、俺らが付き合えるようになったんは、金ちゃんのおかげでもあるわけやし、早いこと言うた方がええかもしれんな。金ちゃんから、そういう質問されるとは思えんし。」

「それもそうだね。」



わざとじゃないとは思うけど、金ちゃん、ありがとね。
そんなことを心の中で呟きながら、私はこの幸せをあらためて噛みしめていた。





***** ***** ***** ****** *****





「あら、金太郎さん。えらいご機嫌やねー。」

「まあなー。」

「今日もたこ焼き食べに行くん?」

「う〜ん・・・・・・そやな〜・・・・・・。そや!今日はみんなで行こか!」

「・・・・・・なるほど。それが今日のアタシらの用事ってことやね?」

「まあ、そんなとこやな!ほな、また後でな〜。」

「はいはい、また後で。・・・・・・ふふ。さすが、金太郎さん。」









← Back



 

ということで、今回書きたかったのは・・・黒い金ちゃんでした!
案外、金ちゃんって、わかっててやってるような気がするんです。例えば、OVAでは、「越前」って呼んだ後、「コシマエ」と言い直した場面があったので、天然じゃない気がするんです。
だけど、その黒さは、すごくカッコイイと言うか、人を喜ばせる、楽しませるためにしか使わなさそうだな〜と思って、こうなりました!・・・相変わらず、捏造激しくてスミマセン!(笑)

一瞬、遠山夢にしようかな、とも思ったんですけど。やっぱり、遠山夢では白い金ちゃんがいいな〜と思って、あえて別キャラ夢にしました。
それと、上述の通り、人のために動いてくれそうなイメージだったので、金ちゃんはメインにしないでおこうと思いました。本当、金ちゃんってカッコイイですよね!・・・それを少しでも表現できてたらいいな〜(笑)。
・・・って、白石夢なのに、白石さんについてノーコメントでごめんなさい(苦笑)。あと、本編もあまり甘くなくて、ごめんなさいorz

('12/06/06)